星を賣る店~クラフト・エヴィング商會

本日は今学期最後の、一日保育で次男も登園する日でした。

…ということは今日を逃すと3月中は子供抜きの遠出が難しくなる…ということで、思い切って世田谷文学館まで行ってきました。

ちなみに千葉市から世田谷までは電車で一時間半、車だと1時間程度。
子供が幼稚園に行っている間に都内まで行くのはよほどのことがない限りないのですが、どうしても観ておかねば、となぜか使命感のようなものにかられ、夫に許可を得て(夫は当然仕事ですが、流石に県外に出るとなると緊急時に何かあった場合困るので…)、子供を送ってからすぐに車を飛ばし、首都高速を抜けて一路世田谷へ。



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どうしても見ておかねば、というその展覧会はクラフト・エヴィング商會の「星を賣る店」。
アートユニット「クラフト・エヴィング商會」の棚卸的展覧会で、今までの著作に登場した作品を「棚卸」という設定で一挙に公開し、また架空の店舗を再現したセットに作品を展示してある、という企画。

うまく説明できないのですが、詳しくはクラフト・エヴィング商會著「クラウド・コレクター」や「ないもの、あります」、「どこかへいってしまったものたち」等の著作をご覧いただきたいと思います。

クラフト・エヴィング商會なる架空の商店が取り扱っていたという設定の、不思議な空想のものを具現化するようなアートオブジェを制作し、それを著作として発表し続けているのですが、実際の(他の著作者の)出版物の装丁などの創作活動も行っていて、どこからどこまでが空想で、何処から何処までが現実か、何とも不思議なアートユニットです。




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実はこの不思議なアートユニットの存在はかねてより知っていたものの、なんとなく敬遠していました。

と、いうのもいかにも自分の好みに合いそうだ、と勝手に思って手に取ったフレデリック・クレマンの「アリスの不思議なお店」を読んだ際に、激しい違和感を感じ、「素敵だと思うのに、入り込めない」「なんだか居心地が悪い」と思うのはなぜだろう…と考えたことがあったからです。

私の個人的な嗜好として「想像の余地のないもの」「すでに作者によってことこまかに説明されているもの」が苦手なのです。
小説は好きで人並みに読みますが偏っており大学(日本語日本文学科・文芸専修)では読書歴の偏りで大分苦労し、さらに美術・芸術となると好みがはっきりしていて、「自分なりに想像することのできる余白のあるもの」でないと受け付けないようなのです。

私がコーネルやマグリットやデルヴォーを愛するのはまさに、「自分なりの物語」を想像できる余白故かと思うのですが、フレデリック・クレマンの「アリスの不思議なお店」のオブジェや絵画は物語のためのもの、という逆転した構図のために居心地の悪さを感じたのですね。
つまりは視覚優位タイプの人間であるか言語優位の人間であるかによってこういった作品群に対する印象は変わるのではないかと思われ、私は言語優位の人間あるが故にこの違和感を感じるのではないかと思います(私個人の勝手な感想です)。


そんなわけで、クラフト・エヴィング商會についても「居心地が悪いのでは」という予感(…と、クラフト・エヴィングという名前で…。これは実在の精神科医で性的倒錯に関する研究者であり「サディズム」の語を作ったことで有名な博士の名前ですね…何故よりにもよってこんな名前?と思っていましたが、タルホ出展であってさして意味はないようです)でずっと敬遠しており、岸本佐知子氏の「ネにもつタイプ」の装丁がクラフト・エヴィング商會によるもの、と聞いて少し興味が出たところへ、一昨年の長野まゆみ氏の資料放出市にて古い雑誌の切り抜き(上の画像がそうです。同じ号に載っていたと思われるアーティストは桑原弘明氏、勝本みつる氏他。豪華ですね)を買い求めたところ、その中にクラフト・エヴィング商會の記事が入っており、ようやく「クラウド・コレクター」から一冊ずつゆっくりと読みはじめたのでした。



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世田谷文学館の展示のことを聞いた時、最初に思ったのは「著作ではなく、オブジェそのものを見たい」ということでした。
「クラウド・コレクター」や「ないもの、あります」などの著作は確かに魅力的ですが、やはり私にとってはどこか、「説明され過ぎ」な感がありました。
その点、オブジェ単体であれば、もっと楽しめるのでは、と単純に考えてのことでした。

結果から申し上げると、とてもよい展示でいたく感動しました。
特に、「古書一角獣」、「クラフト・エヴィング商會」のセット!!
見た瞬間に胸が痛くなるくらい素敵でした。
夢の中にいるときのような、ふわふわと現実感のない感じが味わえます。
アート作品としてオブジェそのものを楽しめるというのも勿論面白い体験ですが、このセットの中にあると自分の中で物語が一気に増殖していく感があります。



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こちらはチケット。
中央の星を抜いたものはそのまま展示されています。



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壁新聞として作られた、号外と、今回の展覧会の図録、おみやげのお菓子。
惜しむらくは、展覧会の図録が先に作られたため、セットの様子は収録されていません。
でも、その方がいいのかもしれません。
写真で眺めてもきっと、魅力は伝わらない。あの場に、立つことに意味があるのだと思います。
(実際、造りは少し粗かったのですが…それを補って余りある、素敵なセットでした)

号外は壁新聞として作られた、と冒頭に書かれており、そう言われたからには壁に貼って読もうと思っているため、まだ読んでいません。



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こちらは「昼と夜のライスチョコ」なる一日30食限定販売のお菓子。
ヘーゼルナッツとブラックチョコ、ホワイトチョコの方はクランベリーとピスタチオが入っています。
美味しい…けど注目したのはホチキスの色。
細かい部分まで拘って作るから、素敵な世界観が立ち上がるのだなあ、などと思ったり。



帰りにはずっと未見だったムットーニのからくり箱の実演も見ることができ、一日とても楽しくみられました。
惜しむらくは…やはり幼稚園のお迎えの時間に間に合うためには、一時間半しか滞在できなかったので、ゆったりゆっくりできなかったことくらいです。

土日は大分混雑する模様で、平日の今日もそこそこの人出はありました。
こういった展示こそ静かにゆったり見るのが肝要と思われますので、これから閉幕に向けて更なる混雑が予想される土日はなるべく避け、可能であれば是非、平日に行かれるのがお勧めな展覧会です。(休みを取ってでも行く価値はあります!)

ちなみに、駐車場は無料で、時間制限はありません。ただし台数に限りがありますので土日は少し厳しそうです…。京王線芦花公園駅から徒歩で行ける距離ですので、確実に見たい方は公共交通機関のご利用をお勧めいたします。


・・・・・・



明日はまた、スノードームの紹介になります。どうぞよろしくお願いいたします。



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Commented by mio at 2014-03-08 00:33 x
楽しまれたようでよかったですね^ ^

今ちょうど「クラウド・コレクター」を注文中なので、この展覧会は羨ましいです!

私はフレデリック・クレマンの「アリスの不思議なお店」が大好きなので、クラフト・エヴィング商會の著作には期待出来そうです。
というのも私は「作者によって完成された物語」を読むことが好きで、更にそこから妄想を膨らませるのが楽しいタイプなので、物語に出てきたオブジェに見立てたアイテムを探したり作ったりするんです(笑)
もしかしたらこんなものも扱ってないだろうかと勝手に妄想するほど!
もちろん自分で物語を考えるのも大好きですけれども、果てない妄想力です。

素敵なものに刺激を受けるのは良いことですよね。
zabienaさんの作品の更なる発展も祈っております♪
Commented by zabiena at 2014-03-08 17:19
mioさん

お陰様で、とても楽しかったです。
本当は昨日は桑原弘明さんの展示もあったのでどちらに行こうか迷ったのですが…アートフェアのほうは販売物もあるので散財してしまいそうで自重したという次第です(笑)

フレデリック・クレマンの作品も素敵ですよね。私もあの本は持っていて、観賞はするのですがなんというか…物欲は刺激されるのに入り込めない感じがあるという・・・。
嫌いではないんですよ、むしろ好きな分野過ぎて細かいところに自分との齟齬、違和感を感じてしまうんでしょうね。

多分フレデリック・クレマンが好きな方はクラフト・エヴィング商會はドンピシャなのではないかと思います
そしてなにしろデザイン分野のお仕事をされている方だけあって、いちいちデザインがおしゃれです。

応援ありがとうございます。
このところいろんな方にもいい刺激をもらったので、時間が足りなくて大変です(笑)
by zabiena | 2014-03-07 22:04 | イベント・展覧会 | Trackback | Comments(2)