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「スミレと鉱物」展とトークイベント「石の華」

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昨日のことになりますが、鎌倉のパトローネ で行われた布花作家utopiano さんの個展「スミレと鉱物 」展に行ってきました。
(写真の蛍石は、以前フジイさんとの個人的なやり取りの中で「歪ですが透明度は高いのでスノードームなどにどうぞ」といただいたもの。デザインフェスタには間に合いませんが、そのうちスノードームかガラスドームに仕立てようと思っています)


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この展示はフジイキョウコさんとの個人的なやり取りの際に教えていただいたもので、私は今まで布花作家utopianoさんを存じ上げなかったのですが、以前フジイさんに見せていただいたutopianoさん作の布花が本当に素敵だったのと、今回のテーマが「スミレ」というところに惹かれ、また最終日の昨日にはフジイキョウコさんのスペシャルトークイベント「石の華」も開催されるとのことでどうしても行きたくなり、千葉から鎌倉へ日帰り小旅行と相成りました。



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諸用あって鎌倉に到着したのは2時過ぎ。
3時のイベントまであまり時間がありません。
(こののちご紹介しますが、イベント会場はかなり離れた場所にあります)

慌てて鎌倉駅からパトローネへ。
こじんまりしたお店ですが、素敵な空間でした(写真は上の画像、入り口のところと、入り口からの遠景であればokとのことで、お店の方の許可を得て撮影しております)。

いけばなに使うようなお花も好きですが、スミレのような、野の花が私は一番好きです。
摘み取って活けるのではなく、ただ、道すがらその美しさをそっと愛でる楽しみ。
小さなその花の可憐な佇まい。

そういったものを表現するのは、派手でわかりやすいものの美を説明することよりずっと難しく、ささやかな美であるがゆえにその人自身の美意識やセンスが色濃く反映されるのではないかと思います。
utopianoさんの作る布花の世界は繊細で詩的で抒情的、けれども押しつけがましい自己主張ではなく、静かで穏やかなものでした。
この空間において私は観察眼に優れたある種の人々…「蒐集家」を想起しました。
それは学術的な研究家の世界とはまた少し違って、好きなもの、興味のあるものに囲まれて夢を見る人々の世界です。
石と花、その取り合わせにそういった夢を見るのかもしれません。

最終日で布花のほうはかなり売れてしまって少なくなっていたと店員さんに聞きましたが、また次の機会がもしあれば、是非私も購入したいと思いました。
…今回は…デザフェス前の資材仕入れのため、今までにない金欠で…泣く泣く諦め、悔し紛れにスミレのハーブティと古い植物図鑑の紙片を何枚か購入するにとどめました。



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今回はスミレと鉱物、ということでフジイキョウコさんが鉱物のコーディネートをされています。
いつもより、小さめで、スミレにちなんで紫色のものや花を連想させる鉱物が多かったですね。
それと、イリノイの八面体蛍石がかなりありました。最終日であれだけあったということは…もっと早く訪れた方はかなり選べたのかもしれませんね。

やはり今年はイリノイ産蛍石の出物が多い年のようで、こののちフジイさんに伺いましたら、やはりコレクターの放出があったようで沢山手に入ったとのこと。
スミレと一緒に閉じ込められた八面体蛍石は、夢のように美しかったです。
ピンクや紫など、澄んだ色の濃いものもかなりありました。

他、フラワーアメジストや重晶石など…目移りし、本当につらかったのですが…前回の「輪唱」で石を購入してしまっているので、こちらも今回はあきらめました…。

いつも思うことですが、こういうところで見る石はやはり、選ぶ人のセンスがかなり反映されます。
「美しい」という基準で選ばれるわけですから当然なのですが、標本の中から「趣ある石」「可愛い石」「魅力的な石」を選んでくる、というのはそれこそコーディネート能力がものを言うわけで、ただ漫然と石を売ればいいというわけではありません。
花屋でも「素敵な花屋さん」とそうでない花屋さんがあるのと同じですね。
この辺りはフジイキョウコさんの卓越したセンスと、編集者としての経験で鍛えられたコーディネート能力がものをいっているのだなあ、などと考えながら見て回りました。



さて、そうこうしているうちに時間です。
Twitterを確認したところ30分遅れで始まるとのことで油断していたのですが、会場は「西御門サローネ」という場所で、かなり歩かねばなりません。
あとから考えればバスに乗ればよかったものを、なぜか歩いて移動したものですから開催時刻ぎりぎりの到着となってしまいました。



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会場となった西御門サローネは作家の里見弴の私邸であった場所で、鶴岡八幡宮の奥に位置します。
閑静な住宅街で、しっとりした雰囲気の洋館なのですが、母屋からつながる奥には高床式の和風建築があったりしてなかなか面白い建物です。

里見弴は白樺派の作家有島武郎の弟、ということは画家有島生馬の弟でもあるわけで、ブルジョワジーな階層の出身であったはず…この優雅なお邸で執筆活動を行う文士にふさわしい背景です。鎌倉には鎌倉文士と呼ばれた一派が住んでいましたから、当時はこういった文人の邸宅もあちこちにあったのかもしれませんね。


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さて、そんな素敵なお邸の中で、フジイキョウコさんのトークイベント「石の華」は行われました。

鉱物のスライドなどを見ながら、石と花が同じ空間に存在することによって生まれる詩情や有機物と無機物の対比の美しさ、コラボレーションの楽しさなどのお話を伺いました。
命はなく結晶の形が幾何学的で鋭角的な印象の鉱物と、生命力そのものの象徴としてのなめらかでやわらかいフォルムの花。
長い長いスパンの時間を過ごしてきた鉱物と、刹那の美しさを誇る花、その時間の対比もまた、美しさの根源かもしれないとの話に、深く頷きました。

興味深かったのは、スライド写真の名前に「お花」「お菓子」などの表記が見られたこと。
お話の中でも「鉱物は本来、ハロゲン化鉱物、ケイ酸塩鉱物などの分類があるのですが、私はお花系、お菓子系などと呼んでます」と仰っていましたが、まさに「鉱物見タテ図鑑」のように、普段からとても身近に、暮らしの中で鉱物を愛でて暮らしていらっしゃるのだな、となんとなく感心してしまいました。
学問的な分類より、楽しむための分類をする、というのは研究家にはない特性であり、それは個人で観賞・蒐集を楽しむコレクターに許された特権でもありますね。
個人的には何もかも学究しなければならないなんてことはなく、「好き」と思ったものに囲まれる暮らしを楽しむ、というのも素敵な鉱物との付き合い方だと思います。

そんなわけでフジイさんのお話の内容はとても興味深かったわけですが、私が一番印象に残ったのは会場の参加者からの歓声でした。
フジイさんが鉱物の写真を紹介されるときにおこる歓声に「可愛い!」という声が多かったのは、こういう場ならではかもしれません。
参加者は30名ほどでしたが一人二人の例外を除きほぼ全員が女性、しかも年齢層があまり高くないように思えました。
石と花、石と乙女、という取り合わせは、鉱物アソビ登場以前にはなかったのではと思います。
それを単なる思い付きではなく、長い時間をかけて昇華し、自分の世界として確立したフジイキョウコさんの功績は大きいと思います。



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さて、1時間ほどのトークイベントが終了後は「なの」さんの和菓子をいただきました。
正岡子規の歌「五透のガラス うつはの水清み 香ひ菫の花よみがえる」が添えられた、ういろうでできた可憐なスミレの上生菓子と、後ろのキューブはラムネです。なんとそのうち一つはスミレ味。
新茶と一緒に頂くと、ほろほろと口の中でほどけて、非常に懐かしい味がしました。
お菓子はお土産にも上生菓子と東の詰め合わせを頂き、なんだか幸せな気持ちになれました。


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余談ではありますが…
帰り道、6時の閉門までは少し時間があったので、鶴岡八幡宮に参拝しておみくじを引いたところ、こんな和歌が!!
吃驚しましたが、内容的にもデザインフェスタ前に勇気づけてもらえた気がしました。
いやはや、仰る通り身を弁え何事も謙虚が一番ですね…。


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持ち帰る際に少し傷がついてしまいましたが…お土産のなのさん作の和菓子。
上生は優しい甘さで、干菓子は繊細な味でした。
パトローネで購入したスミレのお茶には少し合わない気がしたので、お抹茶を点てていただきました。

日々、なんだかんだと雑事に追い立てられて慌ただしく過ごしてしまっていますが、たまにはこうしてゆっくりお茶を点てて繊細なお菓子の味をゆっくり楽しむというのもよいものです。



明日はまた、作品の紹介に戻りたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。




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by zabiena | 2014-04-30 15:46 | イベント・展覧会