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メキシコ産弗素燐灰石(玉髄を伴う)

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本日よりはまた、しばらく通常更新(ほぼ毎日更新)に戻ります。
どうぞよろしくお願いいたします。

それでは本日は、来月初めには新宿ショーも控えていることですし、鉱物のご紹介を。





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弗素燐灰石(玉髄を伴う) / Apatite&Chalcedony
Cerro-Mercado,Durango,Mexico
リン酸塩鉱物 六方晶系
Ca5(PO4)3(F,Cl,OH)


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燐灰石。
さまざまな色の種類がありますが、これは渋いオリーブ色。よく見かける色合いでもあります。
大きく透明感のあるものは宝石に加工されますが、硬度が低いためあまり大きなものは産出されず、宝飾用には小粒のものをよく見かけます。
この標本自体もあちこちが割れたりクラックが入っている様子を観察できます。


個人的に自分のコレクション用に鉱物を買う時にはは「煌めき」「色合い」「透明感」ともう一つ、「物語を感じる」という主観的な項目に基づいて選んでいます。

こればかりは他人にどう説明していいものか、悩むところですが、そのさらに一分野に「どこかで拾ったなら5年は幸せな気持ちで暮らせるであろう石」というような分野があります。
これは私が採集に行かない人間だからこそなのですが、見た目がカオスな共生鉱物だらけで、しかも完璧な姿ではなく欠損している部分があり、けれどその具合がなんとも絶妙、と感じるものにそういった景色を見るような気がします。



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この石にしても、玉髄と燐灰石が共生している上に、オリーブ色の燐灰石は削れたりクラックが入ったりして散々な具合になっているのですが、その欠損した様子まで、なにかそこに美しさを感じます。
図鑑や博物館で見るような、完璧な姿ではなくて、あくまで自分の夢想するジャングルや高原や山岳や…そういった冒険の中で手にしたような気になる石なのです。

以前、「鉱物アソビ」著者のフジイキョウコさんがトークイベント(当日の記事はこちら)にて「図鑑の写真などは立派でわかりやすいけれど面白くないと思っていた」と言うようなことを仰っていましたが、よくわかります。
「知りたい」「調べたい」という知的欲求とはまた別の所にある、「眺めたい」「楽しみたい」という美的価値観による蒐集、といったところでしょうか。



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本日はあまりお天気が良くないのできらめきがうまく撮れませんでしたが…燐灰石は控えめなオリーブ色。
ネオンブルーやくっきりした色合いの燐灰石も美しいですが、あくまで「自然体」なこの色は、抽斗にそっと忍ばせた時にこそ、宝物の風格になる気がします。


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子供の頃、多摩川の河原や砂利道で光る石を探したあの気持ち。
高校時代、岩石墓場(と呼ばれる場所があったんです、私の母校…地学の先生が岩石プレパラートづくりをさせる人で、使えない石を生徒がそこへみんな捨てるから、という理由で代々そう呼ばれてました)で煌めく石は落ちていないかと探し回った夏休みの、あのけだるい感じ。

そういった過去の記憶は年を取るたびに美しさを増して、私をドギマギさせます。
あれからずっと遠いところまで来たにもかかわらず、私が今も心揺さぶられるのは、抽斗にそっとしまえる宝ものだったりします。
それは豪華すぎてもいけないし、美しすぎてはいけない。
あくまで、手の届く美しさの、秘密めいたきらめきを持つものがよいのです。


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実はこれは玉髄部分が薄い黄緑に蛍光するのですが…手持ちの据え置き型ライトではうまく観察できず、かといってペンライト型では観察はできるものの、うまく撮影ができず…このブログでその控えめであやしげな蛍光を読者諸兄にご覧頂くことはできないのです。
そんなところも、私の小さな秘密の宝物、という気がしてきます。


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美しく立派で稀少なものをたくさんお持ちの、コレクターの方には鼻で笑われてしまうであろう、ささやかなコレクションではありますが、蒐集とはあくまで個人的なものですし…自分なりの理想郷をいつか自宅に築き上げる日まで、こういった他愛ものないものをちまちまとこれからも集め続ける気はします。

自分が気に入ったものを眺める喜び。
そういうものに改めて救われ、疲れを癒してもらっている今日この頃です。



この標本自体は少しマニアックすぎるかもしれませんが、石の種類にかかわらず、そういった喜びを分かち合える方のもとへ、一服の清涼剤としての作品をお届けできるよう、次の新宿ショーでは私なりの感性で選び抜いた鉱物を、たくさん仕入れてこようと思っています。…実は一般公開に先駆けて行われる業者デー(一般入場はできません)に縁あって初めて参戦できることになりました。少し緊張しております。

デザフェスではたくさんの方々に支えられ、お立ち寄りいただきお買い上げいただいたお客様のお陰様で、あちこちに道が開けてきそうなお話がちらほらと入ってきており、さらに時計荘としての活動も、充実させていきたいと思っております。
どうぞこれからも、よろしくお願い申し上げます。


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by zabiena | 2014-05-26 21:39 | 鉱物